さてさて、
馴染みのないスイス映画(=ドイツ語)であり、派手な演出がないこともあって、観始めてしばらくの間(あぁ、私には敷居が高かったか・・・)って思ってしまった。
でもすぐに、そんな細かいことはどうでもよくなるくらい、これはとても「分かりやすく」ハートウォーミングで、面白い作品だと思えてきたのだから、映画は早々に諦めてはいけないのだ・・・。
80歳という年齢にも拘わらず、かつての夢だった、お洒落な手作りランジェリーの店を開くおばあちゃんの物語。それは一見先進国であるかの国でもかなり斬新な出来事だったようで、ランジェリー=不道徳(!)と決めつけた村人たちからの大きな反対に遭う。
しかし真っ先に理解してくれたアメリカ帰りの友人、先進的な考えを持つ彼女のおかげもあってマルタの情熱はじわじわ周囲の人を巻き込んでいき、やがては地域の活性化にもつながる展開になっていく・・・のだが。
こんなふうに、年を理由に諦めない、年を重ねることを恐れなくなるようなストーリーは、観ている人の心に希望の火を灯す。インドで第二の人生をスタートするシニアの姿を描いた『マリーゴールドホテルで逢いましょう』にも通じるものがある。
ヨーロッパではこういうビジネスに理解があるものとばかり思っていたが、そうとばかり言えないようで、田舎はこうも保守的で閉鎖的なのかと驚いた。おばあちゃんよりずっと若い世代の人々も、最初は全く理解を示さないどころか、ひどい言葉を投げつけたり店を滅茶苦茶にしたり、平気で妨害するところに唖然とした。当然お客も来ない。それにもめげないマルタ、メンタル強すぎる・・・。
意外だったのは他にも、老いた父親の介護のために車で往復3時間も送り迎えしなければならないという現実。スイスですらこれなのだ・・・。その役を嫌がる息子に替わり、妻(70代?)が一念発起して車の運転免許を取る。これでとりあえずの問題は解決し、夫婦のイイ話としてまとまってしまっているが、高齢者の運転が取りざたされているのはたぶんスイスも同じはず。そう遠くない未来に根本的な解決を迫られる日が来るのだろう。
それはともかく、スイス人にとってもパリ=お洒落、アメリカ=先進的(斬新)、というイメージがあることが微笑ましくもあった。
それにしてもいいなぁ。伝統柄の刺繍を施したランジェリーかぁ。見えない下着の一枚一枚に手刺繍なんて、なんとも贅沢な発想。
老人ホームの刺繍クラスにはおじいさんも参加していて、そこは田舎といえどもやはり先進的かもしれないわぁ。
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