下妻物語


いやはや。この映画の存在は知っていたけど、こんなに面白かったとは!

衝撃のエンターテインメントに、笑って、泣いた。たぶん20回以上は観た。間違いなく今年初めて観た映画の首位候補。

何から語ったらいいんだろう。
映画を観た後に原作も読んだけど、このディープな小説を映画として上手くまとめている印象。

細部までよく練られている。実在するスーパーやブランドや人物も出てくるし、DVDには映画を観ながら監督や主演女優、衣装スタッフらが裏話を語っている音声の特典も付いていて、彼らと一緒に鑑賞すると更に面白い。こんなふうに作っているんだぁって。


キャラ。
深田恭子がロリータに身を捧げ現代(それも茨城の下妻)においてロココの精神を体現している高校生桃子を演じている。彼女の家庭環境を考えてもこれはかなり難しい生き方なのだがそれでも妥協することなく、悪知恵を絞り優雅に?不可能を可能にしている。

そしてイチコ役の土屋アンナ。彼女はお騒がせ女優というイメージであまり興味なかったのだが、本作ではいがめられっこ時代からヤンキーまで、信じられないほどバカだけど真っすぐで純粋な愛すべきキャラクターを演じているのに感心した。実際、初恋に破れ泣くシーンは観ていて思わずこちらももらい泣きしてしまったほど。

面白いのは、桃子が尼崎(どういう土地かは映画で知った。笑)でヤクザの下っ端に育てられたこと。そしてイチコは家族でピアノで合唱するような「良い」家庭で育ったということ。なのに二人とも自らの意思で全く違う方向に進んでいる。環境に左右されず、自分の「好き」を貫く彼女たちの生き方は、スピリチュアルのお手本のようではないか。

桃子のダメおやじ(宮迫博之)も、ダメダメなんだけど憎めない役どころ。印象的だったのは、自分を捨てた元妻が、たかのゆりビューティーシンデレラコンテストに出たものの優勝を逃したシーン。テレビの画面をじっと見ているときの表情がおお、っと思うほどかっこいい。直後またダメおやじに戻るんだけど(笑)。

レディースの総長亜樹美を演じる小池栄子、一角獣のリュウジを演じる阿部サダヲ、実はすごい切れ者のおばあさま樹木希林も皆よかった。


そして・・

手芸好きの私としては、桃子の刺繍の趣味は嬉しかった。尾上雅野さん監修なのだろう、"BABY, THE STARS SHINE BRIGHT"(覚えるの難しい!原作者嶽野のばらも書いていたけど、10回読んでも覚えられん。笑)のお洋服に様々な刺繍のバリエーションを展開するシーンには興奮。ロココ時代には男性の間にも刺繍の趣味が広がっていたそうで、そんな優雅な世界に私も生きてみたかったよ!

桃子の愛読書『ロリータの一生』(実在しません)、一瞬映ったページの文が目茶苦茶で笑えた。バカバカしくて面白い70年代に流行ったような文体?本当にあったら読んでみたい。

映画には出なかったけど、原作でイチコがすごく良いセリフを言うんだ。

ヴェ○サーチのバッタ物について、桃子はブランドを知らない父が勝手に作ったものだから価値がないのだと言うと、たとえ素材が安物であろうと、ヴェ○サーチを作りたいと思って一生懸命作った服ならやはりヴェ○サーチとして認めてあげるべきじゃないか、と言うわけ。もちろんイチコの考えは無知からくるもので社会の常識からはズレまくっているんだけど、努力する人を認めようとする、苦労人の彼女なりの哲学なのだ。(あぁこういうの、うちの父にも似ているなぁぁ)


他にも書きたいこといろいろあるけど、ひとまずこのへんで。

もし茨城に行く機会があれば、牛久の大仏様を是非拝みたい。

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