原題:桃姐、英題:A Simple Life
物語も映像も、山田洋次監督的な作品だと感じた。
60年もの長きにわたってある一家に仕えた、お手伝いの桃さんの物語。家政婦は見た的なお話ではなく、年を取って働けなくなった桃さんを通して、香港の暮らしや家族の絆、人情を描いている。
国は違えど介護事情は似たようなもので、それを雇い主一家が支えてくれることになったのは彼女の人徳なのだろう。施設の環境はあまり良いとは言えないけれど桃さんはラッキーだった。
アメリカやカナダなどに移住する香港人中国人は本当に多くて、家族に置いてきぼりにされる老人もいるのだから。
ちょい役でサモ・ハン・キンポーが出ていた。彼の周囲の映画業界人たちが、いかにもって感じで懐かしかった。
そして印象的だったのが施設の主任女性。明るく知的な美人なのだが、家族のことを尋ねられると急に口を閉ざしてしまい、テレビを見つめたまま長い沈黙。その姿に、一体何があったのか想像をかきたてられるのだった。
それにしても桃さんの作るお料理はどれも手が込んでいて、古きよき中国の香りがする。ご飯は土鍋で炊き、魚は種類によって買う場所を変え、ニンニクを買うのも八百屋さんの貯蔵庫で一つ一つ吟味している。食べる人の好みや体調を考えてメニューを組んでくれる桃さん。だから彼女の後任はなかなか見つからない。
家は古風にこざっぱり整えられているし、こんな良心のあるお手伝いさんがいる家庭で暮らせたらなぁ。
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