時間は希望を待ってはくれない。

もう二昔も前になってしまった、劇団での日々。

家族での上京がきっかけではあったけど、こんなに長く

舞台から遠のくとは思ってもみなかった。

なんて書いてみたけど、実のところ私は演劇人でも

何でもない。

ただ、夫が演出をしていた関係で、ちょっと

その世界に足をつっこんでいただけだ。


正確には17年の長い不在だが、

昨秋、舞台監督だったIの訃報が届いた。

副代表だったNからIが入院中と聞かされて

数日もしないうちのそれだった。


年が明けて、かつての彼を知る人びとと

福岡でIのお別れ会をしようとなった。

で、昨日、その打ち合わせで

副代表から夫に再び電話が入ったのだが、

そのときまたもや信じられない話を聞かされたのである。

当時の若手女優だったYさんに連絡を取ろうとしたところ、

実家のご両親から、彼女が10年も前に亡くなっていたことを

知らされたのだ。

理由はわからない。劇団在籍時は十代だったから、

それでもまだ30代前半だったはず。

私の目から見て彼女は年齢のわりに落ち着いた、

聡明さを感じる子であった。

あれからどんな人生を送っていたのだろう。



長く生きていれば当然いつか起こりうることではあっても

今世の舞台からぽつぽつ降りる人たちを思うとき

わたしたちが地球で体験している時間というものを

強く意識せずにはいられない。


焦り、不安、このままでいいんだろうかと

心をかき乱される、何か。

私はまだ何も成し遂げていない、という焦りと

取っ散らかった身の回りはいったん

整理しておかなければ、という想い。


時間は希望を待ってはくれない。

___とは、私が翻訳した戯曲『アシャーダ月の一日』の

主人公カリダスのセリフである。

心が痛い。


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